重要文化的景観の重要な構成要素に指定された旧笹川分校校舎の改修工事。校舎は、平成23年の閉校後も地域の運動会や収穫感謝祭の会場として、笹川集落の日常に息づいてきた。一方で、屋根や外壁は経年による傷みが見られ、設備の老朽化から各所に不具合も生じ、継続して使用するための対策が望まれていた。
そこで、佐渡金銀山の世界遺産登録を目指す佐渡市では、砂金採掘の中心地であった笹川集落を公開するための拠点施設として旧笹川分校を位置付け、破損箇所の補修に加えてトイレの新設や内装の一部改修を実施した。校舎の裏手には集落の信仰の場である阿弥陀堂が隠されていたが、今回の改修で校舎の一部を減築し、阿弥陀堂と集落の関係を再構築した。
保存するところ、地域の暮らしとして使い続けるところ、建物としての安全性のいずれに片寄るでもなく、文化的景観の理念を体現した新しい文化財改修の在り方を目指した。